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#01 ビタミンの生理機能、食品中のビタミン含量について

健康科学部 健康栄養学科 教授
榎原 周平
研究分野:食品科学、栄養生化学

私たちにとって身近な栄養素であるビタミンは、全部で13種類あり、それぞれが異なる機能、働きを持っています。健康栄養学科の榎原周平教授は、ビタミンB12、葉酸、ビオチンに着目し、食品中の含量の測定から、未だ明らかになっていない新たな機能の解明まで、日々研究を続けています。

研究テーマについて教えてください

ビタミンにはいくつかの種類がありますが、その中のビタミンB12、葉酸、ビオチンについて、これらの生理機能や食品中の含量について研究をしています。研究データを取るために、動物や人や食品を対象にして測定や実験を行っています。

このテーマを選ばれたきっかけや現在の研究に行き着くまでの経緯を教えてください

学生時代にビタミンB12 の生理機能の解明に関するテーマに出合い、その後、葉酸やビオチンにも範囲を広げて研究をしています。栄養学の中でビタミンB12 と葉酸は、いずれも DNA の合成やメチル化反応に関わっているという点で、近い位置付けにあります。これらのビタミンが欠乏すると細胞分裂がうまく進まず巨赤芽球性貧血という病気の発症につながります。また近年、葉酸は動脈硬化症、認知症、骨粗鬆症との関連が注目されています。

実際にどのようなことを調べて来られたのでしょうか

ミクロのレベルの話をすると、体の中ではたくさんの化学反応が起こり、代謝が行われています。この化学反応を進めているのが酵素ですが、ビタミンの多くはこの酵素の働きを助ける補酵素として働いています。私は研究する中でビタミンB12 が補酵素としての機能以外に、細胞の内と外を隔てている細胞膜を介した情報伝達にも関与していることを報告しました。葉酸については葉酸欠乏による骨量への影響について報告しました。
また、ビオチンについては食品中の含量やその測定法について報告しています。食品中のビオチンを測定するには通常、乳酸菌を用いた微生物法という方法を用いるのですが、この方法ではビオチン活性のない物質も一緒に測定してしまうため、キノコ類のビオチン値では高く出てしまう可能性があることが分かりました。実験を重ねデータを取得して、本当のことを明らかにしていく過程は面白いです。
日常生活に目を向けてみると、たとえば食品に含まれるビタミンは、調理や保存の方法によって量が変化します。どのようなことに気をつければ、食品の栄養素を損なわずに摂取することができるのか、興味を持つ学生は多いです。
また、茶葉から急須で淹れたお茶と、ペットボトル茶飲料に含まれている葉酸の量の違いを測定したりもしています。葉酸は野菜から主に摂取していますが、お茶からもある程度摂取しています。学生はお茶をペットボトルで飲むことが多いので、実際どのくらい含まれているのか調べてみようということで取り組みました。茶葉から淹れる場合に比べると、ペットボトル茶飲料の葉酸含有量はおしなべて低い結果となりましたが、食品加工のプロセスで栄養価が変化することに興味を持った学生もいたようです。

今後の展望と、学生に望むことを教えてください

ビタミンは皆さんもよくご存知の栄養素ですが、まだ明らかになっていない未知の働きがあるかもしれません。学生とともに、ビタミンを通して私たちの身体の巧妙さに触れ、感じることができればうれしいです。食品の調理や保存における変化についても、管理栄養士をめざす学生とともに研究し、学んでいきたいと思います。
学生たちにはいつも、あなたの好奇心は満たされていますか?と問うています。学べば学ぶほど不思議なことが新たに生まれ、さらに学びを深めたいと思っている、そんなふうであればうれしいです。何も用事がなくてもいいので、気軽に研究室を訪ねて来てくれればと思います。