MENU

#10 戦後日本の教育政策と WGIP

共通教育部 教授 / 図書館長
大澤 茂男
研究分野:国語教育学、プレゼンテーション理論、 高等教育論

 

全学科の学生に対して日本語やプレゼンテーションの授業を受け持つ大澤教授は、我が国の教育政策を主たる関心領域とし、WGIP と呼ばれる当時の占領政策が、日本側の体制にどのような影響を及ぼしたか、ということについて研究しています。

 

研究テーマを教えてください

 もともとは国語教育、特に教材に関する研究を主にしていましたが、最近では戦後の教育政策(高等教育政策を中心とする)を主たるテーマにしています。
 また、担当科目(プレゼンテーション概論、演習)に関連して、視覚資料(主に図解化資料)に関する研究も少しずつすすめています。

取り組まれている研究は、どのような内容のものですか?

目的

 日本の戦後の教育制度については様々な研究がありますが、WGIP(日本人に戦争の責任・罪を自覚させるための情報統制)と呼ばれる当時の占領政策が、日本側の体制(教育刷新委員会など)にどのような影響を及ぼしたか、ということについてはまだ明らかにすべき点が残っていると考え、それを追究することが今後の教育制度改革への新しい視点を与えてくれるのではないかと考えています。

研究対象

 最近になって多く刊行されるようになった WGIP 関連の文献、また戦後のいわゆる「閉ざされた言語空間」(江藤淳)に関する言説、また近年になって公開された占領期のアメリカ側の文書(マイクロフィルム化されているものを中心に)など WGIP の教育政策遂行の日本側組織体への影響を明らかにできるような文献資料が中心となります。

 上記資料などから抽出できる「戦後の教育政策構築期における WGIP の影響」が中心となるでしょうが、まだまだ検討すべき点が多々あると考えています。

  

このテーマで研究を始められたきっかけや経緯を教えてください。

 大学教員として過ごす中で、大学の運営にも多少関わってきました。そこでどうしても現在の我が国の教育制度、特に高等教育制度が抱える問題点や矛盾を感じるようになってきたことが、新しい研究テーマの設定につながってきたと思います。

 

研究を進められる中で、今どのような課題や成果が見えていますか?

 まだはっきりとした成果が出ているとは言えません。課題はたくさんありますが、問題は WGIP という占領政策そのものにあるのではなく、その受容過程にあるとみていますので、それを明らかにするためのアプローチをもっと工夫することがさしあたっての課題だと考えています。

今後の展望や研究の最終目標について教えてください。

 占領期の米国側の原資料や当時の日本側の「教育刷新会議」などの議事録、およびその他の資料を精査することで、WGIP の戦後教育における受容過程を明らかにすることができればと思っています。最終目標としては、あえて大風呂敷を広げますが、今後の教育政策、特に高等教育政策への建設的提言ということにしておきたいと思います。

高校生、学生、地域の方等へのメッセージをお願いします。

 私たちを取り巻く環境、特に情報通信を中心とするところは劇的に変貌している昨今です。そんな社会で、まず 10 代後半から 20 代前半の若い皆さんへのメッセージとしては、マスコミや SNS などから流される情報はもちろん、学校で学んだことであっても、それらを自らの情報収集力で絶えず検証していくことを大切にしてほしいと思います。私たちが与えられる情報は、様々な理由から加工されたり、あるいは一部が誇張されたり隠蔽されたりして伝えられることがあります。情報ソースの精査も含め、主体的な情報収集を行うこと、即断を控えること、そして信念をもって行動することを大切にしてほしいと思います。
 また、地域の方々には、自身の研究とは離れますが、本学全体としての研究・教育資源をより深く知っていただき、ご自身の生活に生かせるようなリソースとして、本学をご活用いただければと思います。