安心・安全な精神科医療を目指して -看護と管理の視点から考える安全な環境づくり-
![]() | 看護学部 看護学科 講師 髙橋 建司 研究分野:精神看護学 |
精神看護学を専門とする髙橋講師は、精神科病棟に入院する患者さんの攻撃的な言動について、「看護管理者」の対応に焦点を当てて研究を進め、そこから見えてきたものを元に、医療スタッフ、患者さん双方にとって安心・安全な病棟環境づくりのための手法の体系化を探っています。
研究テーマを教えてください
私は、精神科の入院病棟で働く看護師長などの「看護管理者」が、患者さんの攻撃的な言動にどのように対応しているかを研究しています。特に、患者さんの気持ちが高ぶり、緊急対応が求められるような場面で、管理者がどのように行動し、現場の看護師をどのように支えているのかを明らかにするため、インタビュー調査を行っています。精神科医療では、患者さんが不安や混乱から突発的に怒りや暴力的な行動を示すことがあり、その際に看護師が安心してケアを提供するには、管理者の適切なサポートが不可欠です。私の研究は、こうした場面における看護管理者の役割や影響に焦点を当てています。
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それはどういった内容の研究ですか?
精神科病棟では、患者さんの言動が看護スタッフの安全や心理的負担に直接影響することがあります。私の研究では、患者さんからの暴力を未然に防ぐために、看護管理者がどのように現場の体制づくりや教育に取り組んでいるかを調査しました。その結果、管理者による日常的なサポートやリーダーシップが、スタッフの安心感やチームの結束を高め、安全なケア環境の維持に貢献していることが明らかになりました。このような取り組みは、スタッフの個々の努力だけではなく、チーム全体で安全な環境をつくる意識につながっています。
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このテーマで研究を始められたきっかけを教えてください。
精神科病棟で勤務していた私は、患者さんの攻撃的な行動に何度も直面しました。そうした経験から、現場の看護師が単独で対応するには限界があり、組織的な支援や予防的な仕組みの重要性を痛感しました。特に、看護管理者のかかわり方が、スタッフの心理的な支えとなり、さらには患者さんの落ち着きにもつながっていることに気づいたことが、研究を始める大きなきっかけとなりました。この背景のもと、「管理の視点」から精神科病棟の安全性に貢献する方法を明らかにしたいと考えるようになりました。
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今後の展望や目標について教えてください
これからは、看護管理者の具体的な実践や判断の背景をさらに掘り下げ、病棟全体が安心して働ける場となるためのマネジメント手法を体系化していきたいと考えています。最終的には、現場で役立つ対応指針や研修プログラムを開発し、スタッフと患者さんの双方にとって安全で穏やかな医療環境づくりに貢献することが目標です。
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最後に、看護師をめざす学生、高校生の方へのメッセージをお願いします
看護の仕事は、患者さんの命や心に寄り添う尊い仕事である一方、時に困難な場面に立ち会うこともあります。そんなときに大切なのは、「一人で抱え込まず、チームで支え合う」姿勢です。私の研究は、攻撃的な言動への対応を、個人のスキルだけに頼るのではなく、組織全体で取り組むことの意義を示しています。看護の道を目指す皆さんには、「支える人が支えられる環境づくり」という視点も持って、看護の奥深さや可能性を感じてほしいと思います。