MENU

和食だしの嗜好形成による和食文化の保護継承を目指して

健康科学部 健康栄養学科 准教授
國末 直宏
研究分野:調理学

 

健康栄養学科の國末 准教授は、昨今の若者の和食離れによる食生活の変化とそれに伴う健康への影響を懸念し、和食文化の保護継承を目的に、味覚や食の嗜好が発達する学童期の子どもたちを対象とした、だしを摂取する習慣が成長後のだしや和食に対する嗜好、および和食摂取習慣の形成に与える影響についての調査・研究を進めています。

 

研究テーマと内容を教えてください

和食だしの嗜好形成による和食文化の保護継承を目指した研究を行っています。
学童期のだしを摂取する習慣が成長後のだしや和食に対する嗜好、および和食摂取習慣の形成に与える影響を調査しています。
和食ブームが世界的に拡大する中、国内での若者の間では和食離れが進んでいます。
大学生を調査対象に、学童期の朝食での和食だし摂取、朝食の味噌汁、共食、主食摂取などがだし嗜好に与える影響を分析しました。

その結果、学童期のだし摂取が成長後の出汁嗜好に直接影響するとは言えませんでしたが、だしを「おいしいと感じた経験数」がだし嗜好に強く影響することが示されました。
特に、家庭でだしのおいしさを感じた経験や、味噌汁でのおいしさを感じた体験がだし嗜好を高め、これが和食摂取の習慣化に結びつく可能性が示唆されました。
この結果をもとに、学童期までの食生活において、どのようにアプローチすべきかを検討しています。

 

このテーマで研究を始められたきっかけや経緯を教えてください。

この研究テーマに取り組むきっかけとなったのは、若者を中心とした和食離れに対する懸念と、それに伴う健康への影響を重視したことです。
和食には、だしをはじめとする多くの健康要素が含まれていますが、近年の食生活の変化により、和食の基盤であるだしを味わう機会が減少し、日本人の伝統的な味覚が薄れつつあります。
そこで、特に学童期の食経験が成長後に影響を及ぼす可能性に注目しました。
学童期は味覚や嗜好が発達する重要な時期であり、この時期の食習慣が成人後の食行動にどう影響するのかを明らかにすることで、だしや和食文化への関心を引き出し、和食離れを防ぐ一助となると考えました。
また、学童期にだしのおいしさを体験することが和食への好意的な印象を形成し、和食摂取習慣の形成に寄与するのではないかとの仮説も本研究を進める原動力となっています。

 

研究を進められる中で、どのような課題や成果が見えていますか?

学童期のだし摂取が直接的に成長後のだし嗜好を形成するわけではなく、むしろ「おいしいと感じた経験」が重要であることが明らかになりました。
しかし、具体的にどのようなだし体験が嗜好形成に最も効果的かを明確にする必要があります。
また、調査対象が大学生に限定されているため、より幅広い年齢層で追跡研究を行うことも今後の課題です。
成果としては、味噌汁をはじめ、家庭で日常的にだしを味わう機会が和食摂取習慣を増やす可能性が示唆され、家庭の食育が和食文化の継承において重要である点を示しました。

 

今後の展望や目標について教えてください

だしを「おいしいと感じる体験」の機会を増やし、家庭や学校、地域でだしを使った食育を効果的に推進していくことが目標です。
子どもの頃からだしの味わいを感じることで、和食を自然に愛する習慣が育まれ、和食離れを防ぐといった繋がりを生み出し、健康的な食文化を継承することを目指しています。

 

最後に、高校生、学生の方へのメッセージをお願いします

だしの豊かな味わいは、和食の魅力の一つです。和食文化の継承は、伝統を未来に継承する大切な役割であることと共に、健康増進の面でも大きな意義があります。
だしの研究をしながら、日本の食文化の素晴らしさを一緒に学びませんか?