箕面市の学校給食の充実に向けた取り組み
「地域の子どもたちにおいしい給食を 」
海洋環境の改善に寄与する取り組みを発展させたオリジナル献立を考案し、学校給食として提供
献立の背景を子どもたちに伝え、食育活動にも展開
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健康栄養学科の取り組み
箕面市の学校給食に学生考案オリジナルメニューを提供
大阪青山大学の位置する大阪府箕面市は、地元農家からの食材調達や低アレルゲン献立の実施など、学校給食における独自の取り組みを長年にわたり続けてきました。2025 年度からは、「給食の質の向上」「大阪青山大学とコラボした給食献立」が新たなテーマとして掲げられています。これらの実現に向けて、食と栄養の専門家を育成する本学の健康科学部 健康栄養学科が協力依頼を受諾。2026 年 1 月に学生の考案した献立を市内全 20 の小学校・中学校・小中一貫校の給食に提供することが決定しました。
海洋環境に関する研究内容を盛り込む
このプロジェクトに関わるのは、健康科学部 健康栄養学科の蜂須賀ゼミ、國末ゼミに所属する学生たち計 12 名です。
3・4 年次のカリキュラムに卒業研究が組み込まれている健康栄養学科では、学生はゼミに所属して、担当教員の専門分野に沿った様々な研究活動を行っています。
蜂須賀、國末両ゼミでは、「地域と連携した食育活動」を軸に活動。テーマの一つに海洋環境・海洋資源に係る課題解決を挙げ、特に、規格が揃わない、見た目が悪い、販路が限定的などの理由から獲れても廃棄される未利用魚や、生態が地域の漁業や海洋環境に悪影響を及ぼす食害魚の有効活用について研究を進めていました。
給食とともに食についての学びのきっかけを子どもたちに提供できればと考えた蜂須賀准教授と國末准教授(以下:担当教員)は、海洋環境と漁業の課題改善に資する研究から学生の考案する給食献立を立案することを検討、箕面市との協議を経て正式に決定しました。
現地視察と食材の検討
周囲に海を持たない地域に位置する本学は、学外各所の協力を得て中四国エリアの複数の漁港を現地視察。学生らは、漁や水揚げ等の実体験、現地の漁業関係者からの話などを通して、地域ごとの漁業の特性や抱え持つ諸課題について直に学び、そこから加工・調理のアイディアに繋げていきました。
学校給食は調理食数が多く、食材の調達先確保には多くの課題をクリアする必要がありましたが、担当教員によるリサーチ、交渉・調整の末、十分な供給量の確保が可能で、地元の学校給食への食材提供や食育活動の実績も豊富な岡山県日生町の漁業協同組合連合会(以下:岡山魚連)の協力を得ることができ、学生らはここでも現地視察を行いました。
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初回の給食提供で使用するメインの食材は、瀬戸内地方で豊富に漁れる「クロダイ」です。岡山県ではかつてハレの日の食卓に欠かせない高級魚として親しまれていましたが、海水温の変化による個体の増加や地域の主要産業である牡蠣や海苔の養殖場を荒らすなどの問題によって人気が下がり、消費低迷が課題となっています。岡山県では『未利用魚』『食害魚』としてではなく、地域で古くから親しまれてきた水産資源を再評価する形での消費拡大が望まれている魚です。
学生らはこうした背景を学んだ上でクロダイの漁獲に参加し、捌いて調理し、実際に味わって、献立紹介・魚の魅力紹介の媒体作成に臨みました。
学内での検討・試作
“ カルシウムや鉄分がしっかり摂れる給食であること ”という箕面市からの要望に加え、現地視察で得た学びや経験を踏まえ、ポイントを絞っていきました。
「クロダイの持つ旨味を生かす」「魚特有の匂いをマイルドにする」「栄養価を上げるために骨まで食べられるものにする」「子どもたちが食べやすい味付けにする」といった条件を満たすメニューを学生各々が考案し、21 の案を箕面市に提出しました。
その中から、甘辛煮やつみれのスープ、蒸し焼きや唐揚げなど 6 の候補が選ばれ、決定したメニューはまもなく箕面市の「給食だより」で公表されます。
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本学学生が市内の小・中学校で食育を実施
児童・生徒・学生の学びの場として
給食提供に先立ち、学生らは小・中学生を対象とした年齢別の資料を作成し、食育活動などを実施します。食材の背景にある海洋環境の問題、食べ残しの問題、日本の漁業の抱える課題など様々な要素を集約し、学齢ごとの理解度や学習進度に応じたテーマと内容で構築した複数の説明資料を作成。これらを用いて実際にレクチャーを行うことは、管理栄養士をめざす学生にとって食育実践の貴重な体験となります。
また、小・中学校の子どもたちにとって、学校給食を通して地域資源と持続可能な食のあり方について考える機会を得ることは、食卓にのぼる食材に意識を向けるきっかけとなり、食糧生産・流通、食文化への関心の高まり、食べ残しの減少などへと繋がり、それらが将来の豊かで健康的な食生活の礎となることが期待されます。
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日本の漁業振興への一助として
市場の拡大が求められるクロダイを、単に食材として消費するのではなく、貴重な水産資源の一つとして、学校給食という公共性の高い場を通じて問題提起を行うことは、魚食文化の再評価や水産資源への関心を広げるきっかけとなり、子どもたちを通して家庭や地域へと波及する効果も期待されます。
活動実績
| 2024 年 12 月 | 学生・教員による徳島県小松島漁港見学 |
| 2025 年 6 月 | 岡山県漁業協同組合連合会と連携 |
| 2025 年 7 月 | 箕面市教育委員会学校給食室に魚サンプルを提供 アンケート協力校決定 |
| 2025 年 8 月 | 箕面市学校栄養教諭・学校栄養職員及び箕面市教育委員会学校給食室の栄養士参加のもと、学生による献立試作を実施 |
| 2025 年 9 月 | 教員による岡山県日生町視察 |
| 2025 年 9 月 | 学生による献立試作を実施、提供献立の決定 箕面市教育委員会学校給食室に試作品を提供 |
| 2025 年 10 月 | 学生・教員による岡山県日生町視察 |
| 2025 年 11 月 | 初回の学校給食提供日が決定:2026 年 1 月 23 日(金) |
| 2025 年 12 月 | 学生が、自作の教育資料を用いて箕面市内の小中学校で食育を実施 |
| 2026 年 1 月 | 学生が考案した献立を箕面市内の全小中学校で提供(予定) |















