#08 高齢者が地域で生き生きと生活するための支援について
看護学科 教授 南部 登志江 研究分野:高齢者看護、認知症ケア |
看護学部の南部教授は、高齢者が認知症や健康障害があっても、できるだけ住み慣れた地域で生き生きと生活できるような支援について、特に、認知症高齢者と幼児の世代間交流を軸とした研究に取り組んでいます。
研究テーマを教えてください
「認知症高齢者と子どもの世代間交流に携わる施設職員への交流支援プログラムの開発」です。
それはどのような研究ですか?
高齢者が認知症や健康障害があっても、できるだけ住み慣れた地域で生き生きと生活できるような支援についての研究です。特に、高齢者施設を利用する認知症高齢者と保育所に通う幼児の世代間交流の実際や、双方における効果、課題について研究しています。 世代間交流によって高齢者は笑顔になり、子どもとのゲームや歌などの発表に涙するなど、感情の表出や昔を思い出し経験を想起する場となっていました。子どもにとっては、高齢者や認知症者に抱くイメージが肯定的になり、さらに高齢者から褒められることにより自主性の高まりや他者に対する心の成長などがみられていました。また、職員や保育士にとっても高齢者や子どもの交流による高齢者の笑顔や子どもの成長を目の当たりにして、自分たち自身の生き方についても考えることにつながっていました。 |
このテーマで研究を始めたきっかけや、経緯を教えてください
少子高齢化、独居高齢者や夫婦のみ世帯が増加する中、高齢者の役割や居場所の減少がみられています。また、認知症や健康障害を持つ高齢者は施設や病院で生活する人が多いため、子どもやその親世代とのかかわりが減少しています。本人や家族の思いや意思があってもそれらを知る機会が少ない状況です。
子どもにとっても高齢者に対して感謝や尊敬の気持ちを抱く機会が減少し、高齢者に対してネガティブなイメージを持つことが多くなります。子どもと高齢者との触れ合いに不安を抱く保護者もいます。さらに、子どもと親世代中心での生活は、子どもの育ちへのさまざまな影響もあるのではないでしょうか。
これらのことから、認知症であっても健康障害があっても、その人の思いが尊重され、できる限り住み慣れた地域で生活するためには、意図的な高齢者と子どもの世代間交流が必要と考えました。
具体的にはどのような活動をされていますか?
地域子育て支援拠点事業の取り組みの一つに「高齢者等の多様な世代との交流、伝統文化や習慣・行事の実施等」があり、ボランティアとして高齢者も多く参加しています。しかし、高齢者ボランティアのための研修などは少なく、ボランティアの継続が難しい状況です。 そこで、研修会や居場所作りに向けた活動を行っています。 現在は大阪府下 A 市の地域子育て拠点事業所の責任者数名と連携を取りながら、A 市の子育て拠点責任者へ研究協力依頼をしています。 |
研究を通して、今どのような課題や成果が見えていますか?
60 歳以上の社会活動の状況調査から、働いているかボランティア活動、地域社会活動を行っている人が 60 歳から 69 歳では 7 割であり、何らかの社会活動をしたいと考える人が多くいます。単独世帯や夫婦のみの世帯の高齢者は孤独になりやすく、認知症や健康障害につながる確率も高くなります。そこで、ボランティアなどの活動に継続して参加することは、孤独化を防ぎ、生活機能の低下や認知症予防となり、健康寿命を延ばすことにつながると考えます。 特に地域子育て支援拠点で子どもや母親の支援をする活動は、世代間交流による効果である子どもからの活力をもらい、自分自身の生きがいにつながります。さらに、ボランティアの継続や活発な活動は、高齢者の持てる力を引き出し、主体的な活動へと広げられると考えます。 |
今後の目標を教えてください
コロナ禍で、高齢者施設を利用する高齢者も、地域で生活する高齢者も、身体的な活動や精神的・社会的な活動が低下しています。ボランティアや地域での研修会など、身近な場所での活動で高齢者を元気にし地域コミュニティを高める力となるように、地域や公的機関の人を巻き込んだ活動をしていきたいと思います。
今後は、特に地域で生活している独居高齢者や軽度認知症の方が、不安や孤独になることを軽減しできるだけ長く地域で生活できるような支援を行っていきたいと思います。
メッセージ
世代間交流や認知症カフェなどの活動を通じて、高齢者のユーモアや経験の豊かさに元気をもらっています。いつでも、だれでも、気楽に参加できる研修会やボランティア、イベントの機会があり、誰かの少しの手助けがあれば多くの高齢者と家族が気軽に参加することができると思いますので、周りの人はどんどん声掛けをしていただきたいです。 |